保育園の風景

保育園は、我が子たちの安全と成長の場所として、多くの保護者さんや地域住民から信頼を受けています。しかし、災害や緊急事態が発生したとき、その信頼は試されることとなります。

南海トラフ巨大地震は今後40年間に90%の確率で起こると言われていますし、年々、地球温暖化により日本近海での台風の巨大化、線状降水帯による大雨の影響による水害の甚大化など、リスクの大きさが懸念され、自然災害による保育園における業務継続計画(BCP)の重要性が高まってきています。

実際に今年(令和5年)4月には業務継続計画は努力義務化になりました。

詳しくは「保育園・幼稚園・こども園のための命を守る業務継続計画セミナー」にてご案内しておりますが、この記事では、保育園の業務継続計画の作り方の前に、考えなければいけないことを具体的に解説します。BCPをまだ取り入れていない保育園の方や、より実践的な方法を探している園長先生や理事長先生は、参考になさってください。

文書を作る前に検討すること

BCP(業務継続計画)とBCM(業務継続マネジメント)の流れについては、内閣府の業務継続ガイドラインが参考になります(以下の図)

内閣府「事業継続ガイドライン」1.5-1 事業継続マネジメント(BCM)の各プロセス より

具体的には以下のステップが必要です。

リスク評価

最初に、保育園が直面する潜在的なリスクを評価します。地震、火災、感染症の拡大など、さまざまなリスクが考えられます。それぞれのリスクがもたらす影響と、その確率を評価しましょう。

近年では、富士山の噴火が大きく懸念されており、静岡県、山梨県、神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県などは特に影響を考慮する必要があります。

事業影響度分析(BIA)

その時に必要な職員がどの程度か、実際に登園できるのは何人なのか。このあたりは慎重に行う必要があります。

また、地域、保護者のニーズを踏まえ、どのレベルで業務を継続するのか、さらに目標復旧時間を検討します。

重要業務の特定

災害時に最も重要となる業務を特定します。子供たちの安全確保や緊急連絡体制の確立など、保育園における業務継続の要点を整理します。

策定後に重要なこと

教育・訓練の実施

策定したBCPをスタッフ全員で共有し、定期的な訓練を実施します。実際の災害時に迅速かつ適切に対応できるよう、日ごろからの準備が欠かせません。
訓練以外にも、教育・研修や演習も必要になります。専門的な内容になりますので、お困りの際はご相談ください。

BCPの見直し

業務継続計画は、一度作成したら終わりではありません。新しいリスクの発生や環境の変化に応じて、定期的に見直しを行い、常に最新の状態を保つことが求められます。

保育園にとって、BCPは子供たちの安全を守るための大切なツールとなります。上記のステップを参考に、実践的で「命を守れる」業務継続計画の策定を進めていきましょう。